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温室効果ガス(GHG)の排出量とエネルギー収支
太陽光発電のGHG排出量は化石燃料電源の排出量より格段に少なく、利用することでGHG排出量を削減できる。またEPT(後述)やエネルギー収支の点でも優秀な電源とされる
主な影響要因
太陽光発電の発電電力当たりのGHG排出量や投入エネルギー量は、システム製造工程と、設置環境において発電できる量でほぼ決まる。運転時は燃料を必要とせず、GHGを排出しない。メンテナンスや廃棄時に排出するGHGや投入エネルギー量も僅かである。
* システム製造時のGHG排出量や投入エネルギー量は、システムに用いる太陽電池の型と、量産規模に大きく影響される。一般にシリコン系の中では、単結晶シリコン型が最も多く、薄膜型(アモルファス、リボン、積層型など)は少ない。単結晶シリコンに比較して、薄膜(リボン)型シリコンでは発電量あたりのGHG排出量も投入エネルギー量も半分以下になる。また生産規模の影響については、例えば 10MWから1GWになると、投入エネルギー量がさらに半分以下になると計算されている[2]。
* 実際の設置地域で寿命までに発電できる量は日照時間や温度などの影響を受ける。緯度や気候のデータ、過去の実績などから大まかな予測が可能である。
温室効果ガス(GHG)排出量
GHG排出量の計算は、ライフサイクルアセスメント (Life Cycle Assessment,LCA) に基づき、温室効果を持つ全てのガスについて、原料の採鉱や精製、システムの製造から廃棄に至るまでの全過程におけるGHGの排出量を、二酸化炭素 (CO2) に換算した値で求められる。具体的な値は企業秘密に属するため、各工程について複数の生産企業における調査結果を平均して発表するなどの工夫が行われている。 ライフサイクル中のGHGの総排出量を総発電量で割ったものをCO2排出原単位と言い、発電量あたりの排出量の比較に用いられる。
CO2排出原単位は
* 日本では、10年以上前(1996年時点)の技術に基づいた計算では41〜53g-CO2/kWhとされている(電力中央研究所、2000年、寿命30年で計算)。2003年の推計では同様の条件で30g-CO2/kWh前後と算出されており、1996年時点の値に比して約3〜4割の低減となっている。また薄膜シリコン型やCIGS型を用いた場合はさらに数割削減されると見積もられている。
* 欧州南部地域で利用した場合を2005年に解析した結果では30〜46g-CO2/kWh、今後さらに4〜5割程度の低下の余地ありと報告されている(結晶シリコン型モジュールを利用、モジュール寿命30年で計算)。
補足:
* g-CO2 は各種GHGの排出量を、相当するCO2のグラム数に換算した値である。他に炭素のみの重量を考慮したg-Cを用いる場合もある (12g-C = 44g-CO2) 。
* 日本の電力の平均のGEG排出源単位は 約360g-CO2/kWh、化石燃料火力発電の平均は約690g-CO2/kWhと計算されている[14]。化石燃料を用いた火力発電は主に昼間に稼働するため、太陽光発電によるGEG排出量削減効果はこれら2つの中間の値との比較になる。
* 上記より、日本の平均的環境で4kWシステムを設置した場合、一日あたりのGEG排出量削減効果は、二酸化炭素に換算して( 1000(kWh/年) * 4kW / 365日 ) * ( 0.33 〜 0.66 (kg-CO2) ) = 3.6〜7.2kg-CO2/日 と計算できる。
CO2ペイバックタイム
CO2ペイバックタイム(CO2 Payback Time, CO2PT, または二酸化炭素ペイバックタイム)とは、ライフサイクル中の生産などの過程で排出される温室効果ガス(GHG)の排出量を、排出量の削減効果によって取り戻すまでの時間を言う。名称には二酸化炭素(CO2)が用いられることが多いが、メタンなどCO2以外の温室効果ガスの排出についても、地球温暖化への影響力に見合った量のCO2に換算して合算される。ここで炭素に換算した場合は炭素ペイバックタイムと言い、CO2PTと同じ値となる。 CO2PT = (ライフサイクル中のGEG排出量)/(太陽光発電導入によって削減できた1年あたりのGHG排出量)で定義される。
この値は上記のCO2排出原単位と、寿命から逆算できる。例えばGHG排出量が45g-CO2/kWh、寿命20年で日本の平均的な電力と比較した場合は 20×(45/360)=2.5年、火力発電の平均との比較ならば1.4年と求められる。即ち、日本における太陽光発電のCO2ペイバックタイムは1〜3年程度である。将来は1年以下にできると算出されている
エネルギー収支またはEPT
エネルギーペイバックタイム(Energy Payback Time, EPT)とは、ライフサイクル中に投入したエネルギーを発電によって取り戻すまでの時間を言う。EPBTとも略す。ライフサイクル中の投入エネルギーはその殆どが設備の生産エネルギーであり、これにメンテナンスや廃棄時のエネルギーが加わる(廃棄時のエネルギーについては元々小さく、無視されることもある)。 設備の欧米の複数メーカーを対象とした近年の調査結果では、欧州南部の場合で1.7-2.7年、欧州中部で2.8-4.6年である[13]。日本での1999年頃の調査に基づく予測では年産100MW規模の場合、多結晶型で1.4 - 1.5 年とされている(NEDO 報告書No.010019372-1、2001年)。これは太陽電池グレード(SOG)シリコン原料を使用した場合の値であるが、他の半導体素子と共通の製法による多結晶シリコン原料を用いた場合についても、EPTは2年以下とされる。また、アモルファス型のEPTは1.0 - 1.1 年、CIGS型の場合は1年未満とされている)。 太陽追尾装置を備える集光型システムに於ける解析では、ドイツで稼働させた場合はEPTが12-16ヶ月、スペインで稼働させた場合はEPTが8-10ヶ月になるとの報告がある[17])。
エネルギー収支(Energy payback ratio, EPR)とは、生産から廃棄までのライフサイクル中に外部から投入するエネルギーと、発電により生み出すエネルギーの比を言う。寿命を上記のEPTで割って求めることができる。ここで寿命20年で年産規模を10MWと於いた場合のエネルギー収支は8〜11程度となるが、日本の現在の量産規模(500MW以上、上記)に即していない。上記の1999年頃の調査結果に於いて年産規模を 100MWと置き、30年の寿命を想定した場合、多結晶シリコン型で 15〜21 、アモルファス型で 27〜30 程度と算出される。これは海外における調査報告[18]、山田・小宮山らの見積もりとも整合する。
なお、日本ではエネルギー収支を「2」や「5〜9」などとする文書が一部で散見されるが、これは12〜16年以上前の見積もりに基づく値である(1995年3月の電力中央研究所の研究報告Y94009や、1991年の報告書Y90015)。生産方式や技術水準の設定条件が古く、太陽光発電の現在の性能と整合していない[11]。例えば上記の報告書Y90015で多結晶シリコンウエハ生産に必要な電力を設備容量1.1MW分で6250MWh(すなわち、約20MJ/W)と設定しているが、これは現在の技術による値よりも数倍大きく、上記の諸外国における調査結果とも全く整合しない。こうした値を出典や計算条件を明記せずに用いる例がみられ、これにより「太陽光発電のエネルギーペイバックタイムは10年以上」などとする誤った情報が流れたため、誤りである旨が専門機関によって公的に指摘されている
補足
* 送電網に接続する系統連系でなく、独立な電源として利用するために蓄電設備を追加する場合、蓄電池の製造などに要する分、GEG排出量と投入エネルギー量が大幅に増える。中国の砂漠地域に大規模システムを設置した場合のシミュレーションでは、例えば鉛蓄電池にて5日分の蓄電設備を追加した場合、EPTは1.5倍、GEG排出量は2倍に増えると計算されている([2]5.3章など)。
* 日本では一部で「正味エネルギー収支」という指標が用いられる場合があるが、これは「設備利用率」と「所内率」のみで計算され、投入されるエネルギー量の差異は無視している。名称から誤解されやすいが、実際のエネルギー収支を比較する指標としては不適切である。
* 一戸建ての屋根に沿って(もしくは建材の一部として)設置するような場合、設置〜廃棄(もしくはリサイクル用に解体)に伴うGEG排出量およびエネルギー投入量が小さくなり、エネルギー収支の観点からも効率が良い。大がかりな専用架台を造り、廃棄時に再利用困難な廃材が出るような場合などは、設置〜廃棄に伴うGEG排出量および投入エネルギーがその分大きくなる。
* 家庭用の太陽光発電システムはその重量の6〜7割以上がリサイクル可能とされ、実際にリサイクル技術も開発されている(メーカーによる開発例)。太陽電池素子(セル)に関しては性能劣化が比較的少ないため、素子のままモジュールから取り外して再利用する技術も開発されている。リサイクルにより、原料を一から調達して精製するよりも使用エネルギーやGEG排出量が大幅に削減できる。結晶シリコン系太陽電池モジュールをパイロットプラントで処理した実例の解析では、原料を新規に調達して製造する場合に比較して半分以下のエネルギーで済んだと報告されている。近年の製品では将来のリサイクルがしやすいように材料段階から工夫を加える例もある。
* 需要地近辺で発電することにより、送電網全体の変圧器や送電線の温度を下げ、遠隔地の電源からの送電損失を減少させる追加的な効果が期待できる。
* 現在の日本国内での生産規模は一工場で500MW(シャープ葛城工場、2005年)以上に達している
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2008年07月28日
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